ボタニカルアートという言葉を近頃耳にするようになりましたが、決して真新しい言葉ではありません。古代エジプトや中国などでは薬草を見分けるために図譜が作られました。それが植物画の始まりです。大航海時代になって、ヨーロッパ諸国が競って世界各地を探検するようになり、珍しい植物を求め奥地にまで入って行きました。まだ写真のない時代、植物学者と画家がペアーを組み、植物学的にも正しく詳しい絵が続々と本国に送られました。送られてきたそれらの絵があまりにも素晴らしいということから、主にイギリスやフランスで19世紀に大流行しました。今やホテルやレストランのインテリアの絵として定着し、愛好されています。
日本では、日本画の歴史があり、植物も平面的に描かれていましたが、明治に入り東京大学の植物画教室において立体的に見える植物画が描かれるようになりました。
でも、その絵はまだまだ一般的ではなく、絵のジャンルとして確立してきたのはほんの二十年ほど前です。そして、最近になって自然志向の流れと共に、静かなブームを迎えるようになりました。しかし、日本ではまだまだボタニカルアートが広く一般的には認知されていません。


ボタニカル(botanical)とは「植物学的」という意味です。
だからボタニカルアートとは「
植物学的な絵画」のことです。植物図鑑の絵(標本画)がそうです。

ボタニカルアートには4つの約束事があります。

1 実物大に描く
2 背景を描かない
3 人工的な物(植木鉢、花瓶等)を描かない
4 そして、一番大切な約束事は植物の持つ特性を変えないことです。
たとえば、互い違いに出ている葉を同じ所から出ているように描くと、全く違った植物になってしまいます。

以上の約束事をふまえて描いたのがボタニカルアート(植物画)です。

約束事さえ守れば誰にでも描ける簡単な絵です。


ボタニカルアートにたいする私の考え


 ボタニカルアート(植物画)は植物の姿を正確で細密に描く植物図鑑のための絵画です。
しかし、私のボタニカルアートに対する考えは、図鑑のように描く型にはまった狭義の植物画ではなく、植物の形が正しくとらえられていれば、どのような表現でも植物画であると考えます。
そこで私は、植物画の基本を守りながら、日本画や墨絵の技法を取り入れ、より美しいもの、より身近なものにと心がけています。