アリドオシ(蟻通し)

   
 アカネ科アリドオシ属の常緑低木。本州(関東地方以西)、四国、九州、沖縄の山地のやや乾いた薄暗い林下に自生する。
 高さは、30-60 cm。主茎はまっすぐに伸びるが、側枝はよく二叉分枝しながら横に広がる。葉は対生し、長さ1-2.5 cmの卵形で、質は固く表面に光沢ある。葉腋に1対の細長い長さ1-2 cmの棘がある。葉が枝から水平に広がり、それに対して棘は垂直に伸びる。花期は4-5月頃。葉腋に筒状の白い4弁花を通常2個ずつ咲かせる。花冠の長さは約1cm。果実は液果で直径 5-6mmの球形。冬に赤く熟し、先端に萼が残る。
 栽培されることもあり、地方によってはセンリョウ(千両)、マンリョウ(万両)とともに植え、「千両万両有り通し」と称して正月の縁起物とする。別名を一両(イチリョウ)ともいう。
 和名の「蟻通し」の語源には2説ある。とげが細長く、アリでも刺し貫くということから。とげが多数あり、アリのような小さい虫でないと通り抜けられないということから。

 実際に、このトゲがアリを突き剌すわけではないが、細く鋭いトゲなので、小さいアリをも刺すことができるという意味である。トゲは葉腋に一対ついている。もちろん、動物は、そんな鋭いトゲを身につけているこの植物に近づくことはあっても、かぶりつくことはない。
 アリドオシは、「イチリョウ」という呼び名を持つ。よく似た呼び名に、縁起のいい植物として、お正月の飾り物などに使われるマンリョウ、センリョウという植物がある。マソリョウは「万両」と書かれ、センリョウは「千両」と書かれる。これらと同じように、「百両」、「十両」、「一両」とよばれる植物がある。百両は「カラタチバナ」、十両は「ヤブコウジ」、そして「一両」がアリドオシである。
 マンリョウとセンリョウは、正式な植物名であるが、「百両」、「十両」、「一両」は、たとえられるだけの別名である。だから、植物図鑑などの見出し語にはならない。
 これらの植物に共通なのは、秋から冬に、小さな球形の赤色に熟した実をつけることである。この赤色の実の数が多い順にランクづけされて、名前がつけられている。
 だから、「一両」にたとえられるアリドオシは、秋に赤い実をつけるこれらの中で、もっとも少ない数の実しかつけていない。そこで、数少なくしかできない実を動物に食べられないように、アリドオシは鋭いトゲで守っているのかもしれない。
 アリドオシは、「いつもある」という意味で「有り通し」に洒落られている。古くから、マンリョウ、センリョウと並べて、アリドオシをいっしょに栽培すると、「万両、千両、有り通し」といわれ、たいへん縁起が良いとされている。