バナナ

    バショウ科バショウ属の多年草。原産地は熱帯アジア、マレーシアなど。バナナの栽培の歴史はパプアニューギニアから始まったと考えられている。5000年以上前から栽培され、3000年ほど前にはヨーロッパやアフリカにまで広まっていた。日本には江戸時代に琉球王国(沖縄)に伝わった。

 「バナナの木」と言われるように、高さ2-4m、時に10mにもなるが、竹類などと同様に草本であり、植物学では果物ではなく野菜(果菜)に分類される。植物学では木本に成る果実が果物で、草本に成る果実は野菜に分類されている。その高く伸びた茎のような部分は偽茎(仮茎)と呼ばれ、実際には、葉鞘が幾重にも重なりあっているものであり、いわばタマネギの球根を引き延ばしたようなものである。茎は地下にあって短く横に這う。茎のような先端からは、長さ2-3mの長楕円形の葉(葉身)が伸びる。中央に主脈があり、左右に多数の細い脈がある。
 花は偽茎の先から出た、長さ1-2mの下向きの花穂に付く。

 原種のバナナの果実には、硬い種子がびっしりと詰まっていて、食用にはならない。バナナの栽培化の歴史は、種子の詰まった野生種から種なし果実を実らせる品種への改良の歴史だったと考えられている。ニューギニアで歴史的に栽培されているバナナの品種の多くは、受粉無しでも実をつける「単為結果性」を示す。熱帯の先人は、偶然雌花が受粉しなくても結実する変異株を野生の中から選び出したのだろう。
 ただ、現在でもフィリピンやマレーシアでは種子のあるバナナがあり、これは食べられている。
種子なしとなったバナナからバナナを増やすのは、親株の根元から出る新しい芽生えを利用している。

果皮の色は品種によって異なり、一般的に知られるものは緑色から黄色であるが、桃色から紫まで多様である。収穫後時間が経過するにつれて皮の表面に浮かぶ黒い斑点状のものを「スウィートスポット(Sweet spot)」または「シュガースポット(Sugar spot)」と呼び、簡単な熟成のバロメータとなる。また成熟したバナナの皮はクロロフィルの分解物が含まれ、紫外線を照射すると青色の蛍光を発する。

 バナナを切ったり、傷を付けると、黒褐色に変色する。これは果肉や果汁にポリフェノールという物質が含まれているからで、これが空気中の酸素と反応して黒褐色になるためである。これはこの傷口から病原菌が侵入してくるのを防ぐ役目をしている。

 食物繊維を多く含み、1本あたり86キロカロリーと低カロリーで、ビタミンBやC、カリウムを多く含んでいる。

 バナナは熱帯原産だから、日本では沖縄県や鹿児島県でしか栽培されておらず、しかもごくわずかな量なので、ほとんど輸入(99.9%)に頼っている。生産量世界一はインドで、中国、インドネシアと続く。日本の輸入バナナは約100万トンで、その8割はフィリッピンから輸入しているキャベンディッシュという品種である。
輸入バナナは実が硬く青いうちに収穫され、輸入してから室(むろ)に入れて追熟させる。