サクランボ(セイヨウミザクラ) 知人からサクランボが届いた。パックの中に赤く熟したサクランボの果実がきれいに並んでいる。 サクランボはセイヨウミザクラの果実である。セイヨウミザクラはバラ科サクラ属の落葉高木で、西南アジアが原産でヨーロッパ中南部、北西アフリカへと分布を広げた。ヨーロッパでは有史以前から野生化しているという。樹高は15~32mに達し、幹は直径1.5mになることもある。5月上旬に白色の5弁花をつけ、6~7月に果実が熟す。 雌雄同株であり、ハチなどによって受粉する。果実は直径2センチメートルの核果であり、改良品種でもっと大きなものもある。実は夏に熟し、明るい赤か黒紫色となる。実は食べることができ、甘く、いくらか収れん作用がある。新鮮なものはやや苦い。果肉の中には長さ8~12㎜、幅7~10㎜、厚さ6~8㎜の硬い種子があり、平らな面の周囲には溝が付いている。種子の殻を除くと、その中身は6~8㎜である。多くの鳥、動物が熟した実を食べ、果肉だけ消化して、種子を排出する。ただし齧歯類やシメ(スズメ目アトリ科の鳥で、スズメより大きく、ヒバリほどの大きさ)などの鳥は、種子の硬い殻を割って中身も食べてしまう。熟す前の実にはアミクダリンという青酸配糖体が含まれるため、やや毒性がある。 サクランボをオウトウ(桜桃)というが、牧野富太郎は「植物一日一題」の中で、これは間違いだという。桜桃はシナミザクラの果実で、セイヨウミザクラの果実ではない。 明治元年(1868)にプロイセン(現ドイツ)の農業指導者が北海道の渡島に農場を開き、サクランボを果樹として導入した。明治5年(1872)、北海道の開拓使がアメリカから「ナポレオン」や「高砂」など25品種のサクランボを導入した。サクランボの苗木は全国に配られた。明治8年(1875)、梅雨も雨が少なく、雨による実割れも少ない山形県に導入され試作が始まった。北海道以外で、サクランボの試作に成功したのは山形県だけだった。 大正11年(1922)、山形県の佐藤栄助が16年の歳月を掛け、果肉が固くて酸味のある「ナポレオン」と、甘いが保存の難しい「黄玉(きだま)」を掛け合わせ「佐藤錦」を完成させた。 サクランボの生産量の第1位は山形県で全体の7割を占める。2位は北海道、3位は山梨県である。 品種別では「佐藤錦」が7割を超え、2位が「紅秀峰」で15%ほど、「紅さやか」「ナポレオン」と続いている。 サクランボは他の品種の花粉を使って結実させる。「佐藤錦」は「ナポレオンを使って結実させるという。」 |