クレマチス

    クレマチス

 キンポウゲ科クレマチス属の木本蔓性植物。北半球の温帯を中心に230種ほどが分布している。クレマチス属の種間交雑により作出された園芸品種。中国原産のテッセン、ビティセラ、日本のカザグルマ、ヨーロッパのヌギノーサの4種が主になって交雑された。寒さに強く、蔓丈2~3mで茎はやや木質化する。葉は対生し、葉柄は長く、他物に絡む性質が強い。クレマチスの花に見える部分は萼で、花は退化して無い。花は前年伸張した茎の先に付く。花期は5~10月。クレマチスという名前は「小枝」とか「蔓植物の若枝」あるいは「ブドウの蔓」を意味するギリシア語のクレマ(klema)からきている。

 キンポウゲ科の多くは花弁が退化、消失しているものが多い。そのかわり、萼が発達し、花弁のように見えるが、花弁ならその下に存在するはずの萼片は見当らない。
 クレマチス属は萼片の数によってグループがはっきりと分けられる。ギリシヤなどヨーロッパのクレマチスはふつう四弁だが、カザグルマやテッセンをはじめ花の大きいクレマチスは萼片数が多い。これが種類を見分ける重要な特徴である。
カザグルマの萼の数は8枚、テッセンは6枚である。

 カザグルマとテッセンから日本では桃山時代から栽培品種が作出されていた。1800年代以前に栽培品種が作出されていたのは日本だけである。
クレマチスには多数の園芸品種があるが、そのきっかけを与えたのはシーボルト。日本から持ち帰った八重咲きのテッセンなどを1829年にベルギーのフラワーショウに出品した。当時のヨーロッパのクレマチスと較べて、その花の大きさに園芸家は驚き、数年を経ずしてイギリスで改良が始まり、これが現代の豊かなクレマチスにつながる。
 現在は花の大きさ、弁の数は変化に富み、花色も紫、赤、ピンク、白、それに黄色と彩りは豊か。芳香を持つ花もあり、モンタナという種はバニラ入りのクッキーのような香りがする。クレマチスは役者が多彩である。

19世紀も後半になるとヨーロッパでは種間交配が育種技術として普及し、クレマチスでも日本や中国から導入された種をヨーロッパの在来種と交配した新しい園芸種の作出が試みられた。その結果誕生したのが、ジャックマンにより1862年に作出されたクレマチス・ジャックマニーである。 
クレマチス・ジャックマニーはヨーロッパ産のクレマチス・ヴィティケラと中国産のクレマチス・ラヌギノサの交配種であったが、後にはテッセンやカザグルマも交配親に加わり、今日みるような多様な栽培品種の誕生につながった。
 ジャックマンが活躍していた1870年代はクレマチスが大人気だった。その時代をクレマチスの第1次ブーム期と呼ぶなら、現在はその第2のブーム期であるといえる。

 キンポウゲ科の植物には毒を持つものが多い。クレマチスにも毒がある。葉と茎に多く含まれるのがラヌンクリン(ranunculin)。茎の切り囗から滲みでる液汁が肌につくだけで、皮膚がただれる。もしも摂食すれば、酵素反応によってプロトアネモニン(protoanemonin)が発生し、食道や胃腸の粘膜を痛めつけ、炎症を起こす。
 中世ヨーロッパではこの葉をよく揉んで肌にこすりつけ、故意に腫れ物をつくって物乞いをしていたという。