トウモロコシ 世界三大穀物の一つ ![]() テオシントは食用にならない小さな実が10個程度実るのみで、外見もトウモロコシとは明らかに違う。古代の人々はこのテオシントから収穫の度に、大きい果実を多くつける個体を選び、その種を播くことを数千年にわたって繰り返し続けて、現在のような大きい果実を多くつける食べられるトウモロコシに育ててきたと考えられている。 紀元前5000年ごろまでには大規模に栽培されるようになり、南北アメリカ大陸の主要農産物となっていた。 1492年、クリストファー・コロンブスがアメリカ大陸を発見した際、現地のカリブ人が栽培していたトウモロコシを持ち帰ったことでヨーロッパに伝わった。ほぼ即座に栽培が始まり、1500年にはセビリアにおいて栽培植物としての記録が残っている。経緯は不明だが最初の大規模栽培はトルコ帝国から始まり、「トルコ小麦」と呼ばれた。目新しい植物であるトウモロコシは18世紀初頭まで十分の一税の対象となっておらず、粟と転換する形で急速に伝播した。 ![]() しかし、ヨーロッパにおいてはトウモロコシは食糧植物としてはまだ普及していない。 トウモロコシはアジア、アフリカ、アメリカの辺地では今も重要な食料であるが工業先進国ではコーンブレッド、ポップコーンなどマイナーな食料である。しかし世界中で家畜の飼料はトウモロコシに大きく依存しており、先進国で消費される食肉、鶏卵、乳製品は形を変えたトウモロコシ食品である。このほかコーン油、コーンスターチなど料理にも多用され、蒸留酒バーボンウイスキーの原料となり、トウモロコシは先進国でもコムギ、米と肩を並べる重要食糧である。 18世紀はじめ頃のヨーロッパでは、コムギの収穫率はせいぜい5~6倍、つまり1キログラムの種子をまいても5~6キログラムしか収穫できなかった。イネの収穫率はずっと高くて、江戸時代でも30~40倍、現在の日本では100倍を超えている。つまり1キログラムの籾をまけば、秋には100キログラム以上のコメを収穫できる。トウモロコシの収穫率はコメをはるかに上まわっており、現在では一粒の種子をまいて、800粒の種子がついた穂軸を収穫することも可能である。 トウモロコシがコムギに比べて優れているのは、収穫率が高い点だけではない。同じ面積の畑からなら、トウモロコシは重量にしてコムギの3倍以上もの収穫が得られ、面積当りの収穫量という点では、穀類の中では比肩する相手がない。しかもコムギと違ってあまり土質を選ばないので、地味のよくない土地での栽培も可能である上に、ムギ類の耕作の際には必ず問題となる連作も可能である。 トウモロコシが優れた作物とされる三番目の理由は、さまざまな気候条件に適応して生育している点である。トウモロコシは本来、気温30度前後と温暖で、しかも日当たりのよい土地を好む作物であったが、新大陸の中を北はカナダから南はアルゼンチンまで、伝播していった先々で気候風土に適応していった。その結果、乾燥した高地で実りをもたらす品種もあれば、湿地を干拓したような湿潤な畑でもトウモロコシは栽培されているし、暑い砂漠の周辺が好きな品種もあれば、カナダの大西洋岸のように冷涼な気候のもとで実りをもたらすトウモロコシもある。トウモロコシはさまざまな気候条件のもとで、つまり地球上の広い地域での栽培が可能な作物なのである。 トウモロコシの世界全体の生産量は、2009年に約8億1700万トンで、うち米国が3億3000万トン以上を生産し、4割程度を占め世界最大の生産国となっている。またアメリカは世界最大の輸出国でもあり、シェアは6割を超える。このため、アメリカの主要生産地帯の天候により世界の在庫量・価格が左右される。先物取引の対象ともされている。 2007年度のトウモロコシの世界消費は、家畜の飼料用が64%で最も多く、ついでコーンスターチ製造などに用いられる工業用が32%を占め、直接の食用はわずか4%にすぎない。 近年、最大の生産国であるアメリカにおいてトウモロコシを原料とするバイオマスエタノールの需要が急速に増大し、エタノール用のトウモロコシ需要は1998年の1300万tから2007年には8100万tにまで急拡大した。これによりトウモロコシの需要は拡大したが、一方で生産がそれに追いつかず、これまでの食用・飼料用の需要と食い合う形となったために価格が急騰し、2007年-2008年の世界食料価格危機を引き起こした原因のひとつとなったという説もある |