クリスマスローズ キンポウゲ科ヘレボルス属の多年草。ヨーロッパ原産。 草丈20~40 cm で、黒く短い根茎をもち、葉は根生する掌状複葉をつけ、全株無毛である。冬季に白色、のちに紫色をおびる直径5~6cmの5枚の萼片が花弁状になった花を咲かせる。本当の花弁は小さな密腺に変わってしまって目立たない。 12~2月の冬季に開花する。樹下などの排水、保湿のよい半陰地に適した宿根草で、秋または早春に植え付ける。繁殖は株分け、または実生による。 クリスマスローズは根にステロイドのヘレブリンなどを含み、強心作用がある。抗癌作用もあるというが毒性が強い。 クリスマスの頃にバラのような美しい花を咲かせることからこの名が付けられた。しかし、この名前が付けられたのは最近のことで、以前は学名のヘレボルス・ニゲル(Helleborus niger)と呼ばれていた。ヘレボルスは「死に至らしめる食べ物」を意味する。ニゲルは黒いという意味で、根の色に由来している。 名前の通り全草、特に根に有毒成分を含んでいる。心臓毒であるヘレブリン(強心配糖体)やサポニンを含み、服用すると、嘔吐、腹痛、下痢、けいれん、呼吸麻痺、めまい、精神錯乱、心拍数の低下、心停止などをひき起こす。また、目や口・のどなどの粘膜がただれたり腫れあがったりするプロトアネモニンという毒成分も含まれている。 古くから薬として利用され、催吐剤、下剤、強心剤、利尿剤、麻酔薬として使われ、また害虫駆除にも使われた。 ヨーロッパでは根のもつ薬効が珍重された。古代ギリシアでは頭の働きをよくする薬として、劇作家や哲学者が好んで服用した。また鬱病やヒステリーを癒やす効果もあるとされ、採集者はこの草を引き抜く時根の周りに剣で円を描き、アポロとエスキュラピウスに祈りを捧げなければならないと考えていた。同時に、ワシがその時飛んでいないかどうか用心しておかなければならなかった。というのは、ワシが偶然に上空を飛んでいたとすると、その人は一年以内に死ぬと考えられていたからである。ヘレボルスの毒性から身を守るためには、前もってニンニクを食べておくと効果があると考えられていた。。 またギリシアの伝説によれば、山羊飼いのメランプスという男が、これを食べた自分のヤギの反応を観察していて最初にこの植物の性質を知ったという。彼はアルゴスの王プロエツスの娘が精神錯乱を起こした時、これを用いてその治療に成功した。 明治初年に日本に渡来した。現在、花屋で売られているクリスマスローズは同じヘレボルス属のレンテンローズで、正しくはクリスマスローズではない。 |