ハルジオン(春紫菀)とヒメジョオン(姫女菀)

 
   
            ハルジオン           ヒメジョオン

 春3月になると、美術館の周りの道ばたや野原にハルジオンが咲き出す。かなり旺盛な植物で、年々分布域を広げている。5月を過ぎると、ハルジオンと入れ替わるかのようにヒメジョオンが咲き出す。ある時期、同時に並んで咲いている。ハルジオンとヒメジョオン、同じような花姿で区別が付かない。
どちらもキク科ムカシヨモギ属の多年草で、北アメリカが原産地である。

 ハルジオンとヒメジョオンの違いは、茎を折るとすぐに分かる。ハルジオンは中が空洞になっていて、ヒメジョオンはなっていない。
 ハルジオンの花とヒメジョオンの花を比べてみると、ハルジオンの花弁は細く(1mm以下)、ヒメジョオンは太い(1.5mmほど)。ハルジオンの蕾は下に垂れているが、ヒメジョオンは蕾の時から立っている。ハルジオンにはピンクがかった花があるが、ヒメジョオンはほとんど白である。


ハルジオン

 茎は直立、上方で分岐があり高さ50~100cm、白毛が密生し、中空である。根生葉は茎の下部につく葉と同様にへら状楕円形~へら状長楕円形で、あらい鋸歯があり、柄には翼がある。茎につく葉は互生、中部~上部のものが長楕円形、基部が耳形で茎を抱く。葉の両面に軟毛がある。花は頭状花で直径1.5~2.5 cm。総苞片はひ針形~線状ひ針形で3列に並ぶ。舌状花は淡紅紫色、筒状花は黄色。果実は淡黄色の痩果、扁平で広線形。種子及び根茎により繁殖する。主に夏から秋に発生し、ロゼットを形成して越冬し、花期は翌春~初夏。日本には大正時代の1920年ごろに観賞用として持ち込まれ、第二次世界大戦前に帰化し、関東を中心に広がり、戦後、関西に広がった。1980年頃に除草剤への耐性ができ今は全国に分布する。


ヒメジョオン 

 キク科ムカシヨモギ属の一年生または二年生草本。北アメリカ原産。
 全体にやや粗い毛を布き、ざらつく。根生葉は卵形、縁に粗い鋸歯があって長い柄があり、ロゼットを形成する。茎は直立して上部で分岐し、高さ1.5mほどになる。茎の断面は中実。茎に着く葉は先の尖った広楕円形、縁には低い鋸歯があってほぼ無柄で互生する。春から秋にかけて枝の頂に直径2cmほどの頭状花を多数着ける。開花前の頭状花は上を向く。舌状花は白色、筒状花は黄色でともに多数。筒状花にできるそう果には長い冠毛がある。江戸時代末期の1865年ころに観賞用に導入され、ヤナギバヒメギク(柳葉姫菊)などの名で呼ばれた。明治年間から各地に帰化し、現在では全国にごく普通に見られる。若い苗は食べられる。
1個体あたり47,000以上の種子を生産し、さらにその種子の寿命が35年と長いこともあり、驚異的な繁殖能力をもっている。したがって、駆除がとても難しい。

ヘラバヒメジョオン
 北アメリカ原産でヨーロッパやアジアに広く帰化している越年生草本。全体に伏した毛があってざらつく。根生葉は長い柄があってへら状のひ針形、縁には低い鋸歯があり、冬期間にはロゼットを形成する。数本の中実の茎を立て、ひ針形で低い波状の鋸歯のある葉を互生し、上部で分岐して高さ1mに達する。春から夏にかけて枝の先に直径1.5cmほどの頭状花を多数着ける。舌状花は白色、筒状花は黄色、蕾のときにも下垂しない。大正年間に帰化したとされ、ヒメジョオンとほぽ同様の場所に生育するが、より痩せて乾燥した土地でも生育出来るため、自然植生の中に入り込むことも多い。

ヤナギバヒメジョオン
 ヒメジョオンとヘラバヒメジョオンの自然雑種のひとつと考えられている植物。ヒメジョオンに比べて、葉が細く、鋸歯が低くて目立たない、葉色が濃く、葉縁が裏側に反る、
などの点で違いが見られる。花は直径2cmほどで、ほぼヒメジョオンと同様。1930年代に関東地方で見いだされ上記両種の混生する各地で散発的に発生する。


 ハルジオンもヒメジョオンもどちらも雑草扱いされ、繁殖力が強く日本の在来種を駆逐するほどなので、侵略的外来種に指定されているが駆除が難しい。