カリン(花梨)


   
 バラ科ボケ属の落葉小高木。原産は中国東部で、日本への伝来時期は江戸時代とされるがよく分からない。高さ6~10m。樹皮は緑色をおびた褐色で、古くなるとうろこ状にはがれ、不思議な紋様を作り出す。花期は3月〜5月頃で、5枚の花弁からなる白やピンク色の花を咲かせる。葉は互生し倒卵形ないし楕円状卵形、長さ3〜8cm、先は尖り基部は円く、縁に細い鋸歯がある。

 和名のカリンはマメ科植物の花櫚(かりん)と木目が似ていることから付けられた。しかし、カリンと言えば一般にはバラ科の本種のことを指し、マメ科の花櫚と思う人はあまりいない。
 カリンの果実を二つ割りにして乾燥させたものを生薬の木瓜(もっか)、または和木瓜(わもっか)という。日本で「木瓜」と書くと、ボケを指している。
 また、同じボケ属にカリンによく似たマルメロがある。マルメロはイランやトルキスタンが原産の植物である。長野県諏訪地方では江戸時代にこのマルメロをカリンと間違って導入し、今でもカリンと呼んでいる。
マルメロとカリンの違いは、果実が洋ナシまたはリンゴに似た形をしているのがマルメロで、カリンは楕円形である。さらに、マルメロの未熟な果実には全体にビッシリと短いうぶ毛が生えているが、カリンには無い。
 カリンの葉には鋸歯があるが、マルメロの葉は鋸歯が無く楕円形で丸みがある。

 カリンの成熟した果実は前述のように楕円形で、黄色の大型、トリテルペン化合物による芳しい香りを放ち、収穫した果実を部屋に置くと部屋じゅうが香りで満たされるほどである。10〜11月に収穫される。果実には果糖、ビタミンC、リンゴ酸、クエン酸、タンニン、アミグダリンなどを含む。適湿地でよく育ち、耐寒性がある。木化した果肉は堅い上に渋みがあり、酸味が強いので、生食には向かない。砂糖漬けや果実酒に加工される。加熱すると渋みは消える。
 カリンの果実に含まれる成分は咳や痰など喉の炎症に効くとされ、のど飴に配合されていることが多い。
 花・果実とも楽しめ、さらに樹皮・新緑・紅葉が非常に美しいため家庭果樹として最適である。語呂合わせで「金は貸すが借りない」の縁起を担ぎ庭の表にカリンを植え、裏にカシノキを植えると商売繁盛に良いとも言われる。

 リンゴ酸は一般に清涼剤とされ、また短期間内に腸管内を酸性化するほどに投与すると、赤痢菌、コレラ菌、腸チフス菌などの繁殖を抑制する。細菌類は弱アルカリ性でないと繁殖できないからである。さらに、鉄剤の吸収促進に役立つ。従って胃切除をした人などは鉄剤を服用した後に食べるとよい。
 芳香成分には腸の平滑筋の緊張をゆるめるとともに利尿効果もある。
 西洋医学では補血剤のリンゴ鉄エキスなどの製造原料として利用した。

 カリンの材質は緻密でかたく、光沢のある赤褐色で美しいため、床柱や家具、ステッキ、額縁、彫刻、バイオリンの弓などに用いられる。