オオシマザクラ バラ科サクラ属の落葉小高木。伊豆大島に多いのでこの名がある。伊豆諸島特産。伊豆半島や房総半島にも野生化しているが、自生であるという説と、昔薪炭用に植えたものが野生化したとする説がある。カスミザクラから分化して出来たものと考えられている。 美術館の周りにも、何本もオオシマザクラを見ることができる。もともと自生していたものか、植えられたものかは分からない。 花は白色のものが多いが、わずかに淡い紅色のものや、まれに淡紅紫色のものもあり、先端や外面がやや濃い色のものも見られる。花には芳香がある。葉は桜餅を包むのに利用される。5~6月に赤い実をつける。実は、さくらんぼの1/4~1/2ほどの大きさで、後に黒く熟し、はじめ苦味や酸味があり、のちに甘みが多くなる。 また、多くのサトザクラの栽培品種生成のもととなったサクラでもある。ソメイヨシノやオオカンザクラ、カワヅサクラの片親はオオシマザクラである。 桜餅には桜の葉を使う。桜の生の葉には香りはなく、桜の葉を塩漬けしたり傷つけることによって香る。この香りの正体はクマリンという成分である。 虫に葉をかじられたりすると、クマリンが生成されて香る。人にはいい香りだが、虫にとっては嫌な香りである。サクラはクマリンを生成することによって、虫を撃退している。 桜の葉は餅に香りを添え、葉で包むことによって内容物の乾燥を防ぐ。ではどうして、オオシマザクラが使われるのか。それはオオシマザクラ以外の桜の葉は、食べると葉の繊維の筋が残って好まれないからである。そのため葉がやわらかく毛が少ないオオシマザクラの葉を塩漬けにして使う。この塩漬けの桜の葉は、全国シェアの70%ほどが伊豆半島の松崎町で生産されている。餅の大きさとの外観上のバランスから、関東では大きめの葉、近畿では小さめの葉を好んで使う傾向がある。 関東南部の伊豆諸島や伊豆半島、房総半島などに分布する種。比較的成長が早く、海岸などの悪環境にも生育することから、分布地の周囲では薪炭林に植栽されていた。潮害、大気汚染に抵抗性が強いため、近年では緑化用に植栽されたものが野生化しており、日本海側の海岸でも広がっている。花はふつう一重咲き、大輪、白色だが、半八重咲きの個体もしばしば見られる。八重咲きの里桜はオオシマザクラが母体となって生まれたと考えられている。花には芳香がある個体も多い。花の早いものは、伊豆大島で1-2月に咲く。サクラ遺伝子研究所には複数植栽されているが、残念ながらいずれもその由来は明らかではない。 |