ランタナ(七変化)


   ランタナはクマツヅラ科ランタナ属の常緑小低木で、熱帯アメリカの原産。可憐な花を咲かせ、栽培も簡単なことから世界中に広がった。日本にも江戸時代末期に観賞用として渡来したとされる。
 ただ繁殖力が強く、世界各地で野生化している。国際自然保護連合(IUCN))は「世界の侵略的外来種ワースト100」に指定している。それは栽培植物の生長を阻害したり、家畜に中毒を起こさせることからである。日本でも九州南部や沖縄などで野生化したが、繁殖力が旺盛で伊豆半島でも野生化している。ただ、寒さに弱いので寒い地域には侵入できないようだ。
 茎は断面が四角で細かいとげが密生する。葉は対生し表面がざらついている。
 夏から秋に、枝先に小さな花が集まって咲く(散形花序)。これらの花では、花色を構成する複数の色素が時間差をもって合成されてくるので、花の色が変化する。同時にさまざまな色が混じる花の集団は虫の目を惹くに違いない。中央にある花は初めは黄色をしており、やがて橙色になり、周辺部に押しやられていき、受粉した後は紅色に変化する。そのため、花の中央部は咲いたばかりの黄色の花、その周りに赤色の花となる。このように花が日がたつに従って変化していくので和名はシチヘンゲ(七変化)と呼ばれている。
ランタナに訪れるハチやチョウは中央の黄色い花に止まり、周りの赤い花には止まらない。多くの昆虫は赤色より蜜の多い黄色に反応するためである。色の変化は昆虫に花に蜜があるかどうかを知らせるサインでもある。
秋になると、黒い果実ができる。

 ランタナの花や果実には有毒成分のランタニンがふくまれている。前述の栽培植物の生長を阻害したり、家畜に中毒を起こさせるのもこのせいである。間違って食べると、嘔吐、腹痛、下痢、口腔内の痛み、虚脱状態になるという。森昭彦「身近にある毒植物」によると、『カリフォルニア州では、1997~2008年の間に641名の中毒患者が運び込まれた』とある。また、フロリダ州では子供が未熟な果実を食べて死亡した例もあるという。