ロウバイ(蠟梅、臘梅)

   
 冬の寒空の下で黄色い花が咲いている。ロウバイである。ロウバイは漢名の「蠟梅」または「臘梅」の音読みである。蠟は花色が蜜蠟に似ているためで、臘は臘月(旧暦の12月)に花が咲くためという。
「蠟梅」の「梅」は花が梅に似ているためや、枝振りが梅に似ているためとか、花の香りが梅に似ているためだという。花の香りのせいか、英語名はSweet Winter(冬の甘い香り)という。

 しかし、ロウバイは梅の仲間では無く、ロウバイ科ロウバイ属の落葉低木である。中国原産で、上野益三の「日本博物学史」によると、江戸時代の初期である正保3年(1646)に中国から渡来したとされる。
 中国では冬の寒中にも咲く花であるウメ、スイセン、サザンカと共に「雪中四友」として文人に好まれた。

 高さ2~4m。幹は叢生して分枝する。1~2月、葉の出る前に径2センチ程の香の高い黄色の花を下向きにつける。花被片は多数重なっていて、萼片から花弁へと連続して区別出来ない。ロウバイの花の内側は暗褐色で、中にオシベが5,6本、メシバが多数ある。
花の終わった後、葉が出始める。葉は対生し、卵形で長さ15cmほど。先端が尖り、表裏共にざらつく。葉を指先で揉むといい香りがする。
果実は痩果で3,4cm位の楕円形で、先端がくちばし状になっている。熟した実を割ると、長さ1cm、幅5mm位の種子が数個から10個程度見られる。

 ロウバイを最初にヨーロッパに紹介したのは、17世紀末に出島のオランダ商館に医師として勤務したドイツ人のエンゲルベルト・ケンペルである。彼は医師であるとともに博物学者でもあった。植物学を中心に博物学研究を行い、出島に薬草園を作った。著書『日本誌』は、彼の死後英訳版で発行された。その中でロウバイのことにも触れている。
18世紀の半ば頃に日本または中国からヨーロッパに輸出された。

 花は茹でて水であく抜きをしてから、油炒めして食べることができる。中国では乾燥した花を茶に入れて飲む。
 また、乾燥した蕾は蠟梅花(ろうばいか)という漢方薬となり、煎じて飲めば頭痛の緩和薬、咳止め、解熱薬として使われる。
 しかし、全株にアルカロイド系の有毒成分であるカリカチン(種子に多い)やキモナンチン(葉に多い)を含んでいるので素人療法は避けた方がよい。
土橋豊の『園芸有毒植物図鑑』によると、カリカンチンは劇物で、微量でもって強力な毒性を発揮する。特に含有量が多い種子を摂食した場合、中枢神経を麻痺させ、手足が硬直し、身体が弓なりになるほどの激しい痙攣を起こすという。

作品は園芸種のソシンロウバイ(素心蠟梅)である。ソウシンロウバイは花の内側も暗褐色では無く、全体が黄色である。