サルトリイバラ(猿捕り茨) 美術館で、この作品をご覧になった後、時々サンキライ(山帰来)だと言われる方がいる。サルトリイバラは秋田の方言でサンキライというので、秋田出身の方かもしれない。しかし、「山帰来(サンキライ)」は同属別種でインドや中国の植物で、日本には自生しない。ただ、生け花の世界ではサンキライもサルトリイバラも区別せず、どちらもサンキライと言っているようなので、生け花をしている方かもしれない。 サルトリイバラはかつてはユリ科に分類されていたが、現在はサルトリイバラ科シオデ属の蔓性落葉低木になっている。日本各地の山野に自生。雌雄異株。木質の蔓で、茎は堅く節ごとに曲がり、まばらに棘があり他の植物に絡まり伸びる。葉は互生し、卵形または楕円形、革質で光沢があり、3~5本の平行脈が目立つ。ルリタテハの幼虫が食草とする。 初夏、葉腋に花柄を出して、黄緑色の小花をつける。花後、雌花は球形の液果となり、晩秋に赤熟する。 「猿捕り茨」は、サルが刺に引っ掛かって登ることができず、人に捕らえられてしまうイバラという意味。 各地でごく普通に見られる植物なので、方言も多く、「日本植物方言集」には255の異名が記載されている。 サンキライの根は土茯苓(ドブクリョウ)といい、 瘡毒(梅毒)の薬に用いられた。 サルトリイバラの根茎は多量のサポニンを含み、漢方では菝葜(ぱっかつ)という。俗に和山帰来(ワサンキライ)と呼び、サンキライの代用として江戸時代には 瘡毒の薬として利用した。また、利尿、解熱、消炎に用いた。 山帰来の語は、もともと漢名ではなく、わが国で用いられた俗語で、重い瘡毒を病んだ者を山に捨てたところ、山の中に生育する土茯苓のお蔭で病気が全快、元気で山から帰って来たので、この名が起こったと「和漢三才図会」はその由来を説明している。 若葉はゆでて食用とし、成葉は茶の代用として利用され、熟した果実も食べられる。また果実はホワイトリカーにつけて果実酒にする。西日本では大きく育った若葉で餡餅を包み、端午の節句の柏餅とする風習がある。そのためマンジュウシバとも呼ばれている。 赤く熟した果実のついた枝葉は、生け花の花材に使われる。 |