さざんか さざんか 咲いた道 たき火だ たき火だ 落葉たき あたろうか あたろうよ しもやけ おててが もうかゆい 童謡「たき火」の2番の歌詞である。最近は焚火の光景を目に しなくなったが、かつては落ち葉の舞い散る時期に焚火の光景 をよく目にしたものだ。サザンカはそんな晩秋から初冬にかけて の寒い時期に咲く。そのためサザンカは寒さに強い植物だと思 われている。 しかし、サザンカは開花時期に寒気にさらされると花が落ちる。 また四国南西部から九州中南部に分布し、かつては吉野ケ里 遺跡の近く佐賀県背振山系の千石山が自生北限地帯とされて いた。ところが近年の調査では、山口県萩市の西北端にある日 本海に突出した標高143mの指月山の山中に自生の北限が見つ かっている。いずれにしても自生地は暖かい地域である。本州に見るサザンカのほとんどが植栽されたものである。原種のサザンカは特に寒さに強いわけでは無い。品種改良された園芸種には寒さに強く、真冬でも花を咲かせる品種も少なくない。 サザンカは、ツバキ科ツバキ属の常緑広葉樹である。古くはツバキと巌密に区別されていなかったとみられ、古い文献にサザンカの名は見られない。室町時代後期に一条兼良によって編纂された『尺素往来(せきそおうらい)』に「山茶花(サンサカ)」と記されているのが初見である。 サザンカの名は中国語でツバキ類一般を指す山茶に由来し、それに花をつけた「山茶花」(サンサカ)が訛り「さんざか」と言ったが、音位転換し「茶山花」(サザンカ)となり現在の読みが定着したと考えられている。 ツバキとサザンカの違いは何か? t
前述のように、野生のサザンカは晩秋から初冬に花が咲く。この時期に花を咲かせる木はほとんどないのに、サザンカはなぜ初冬に花を咲かせるのだろうか。 植物にとって、開花に至るまでのプロセスは花芽の分化、形成、成長に大別できる。 サザンカは6月頃から花芽を分化させ、8月頃には形成を終える。しかしこれは、ウメ、モモ、サクラをはじめ春に開花する花木の多くも同じである。すなわち春に開花する花木は花芽の形のまま冬を越す。なのにサザンカは何故早々と晩秋から初冬に開花するのか。 サクラなど春の花が8月に花芽の形成を済ませながら、開花しないのは開花プロセスの促進が阻止されるからである。それを休眠と呼ぶ。休眠は葉で形成される植物ホルモンのアブシジン酸によって起こり、低温によって打破される。 アブシジン酸は花芽の成長を抑制させる働きをもっていて、春に咲く花木の花芽の成長を抑制している。しかし秋口の台風で葉が散ってしまったり、害虫によって葉が食害され、裸になると、アブシジン酸が供給されなくなり、花芽は休眠せずそのまま成長するので、狂い咲きすることがある。 晩秋になって落葉すると、アブシジン酸を作る葉が無くなるので枝や芽に残るアブシジン酸は徐々に分解され減少していくが、その頃には気温が下がってしまい花芽は伸びられない。 アブシジン酸の分解も、寒さによって進むようで、10月以降もアブシジン酸が蓄積された場合は一度、低温にあわないと開花しない。例えば、ソメイヨシノの花芽は、秋の間しっかり休眠した後、冬の寒さにさらされると休眠が打破され、目が覚める。したがって、暖冬で冬の寒さが足りないと、休眠がしっかりと解除されず、開花が遅くなったり、満開にならなかったりする。つまり、開花のプロセスには、冬の寒さも必要なのである。 これに対し、サザンカはアブシジン酸などの休眠ホルモンが生成されないか、その影響が少ないようで、常緑であっても夏に分化した花芽はそのまま発達し、秋の開花にいたるのである。 晩秋から初冬に咲くサザンカには、何か利点があるのだろうか。例えば、サザンカやツバキの花には蜜がたくさん出るので、ハナアブなどの虫や、メジロ、ヒヨドリなどの鳥が喜んでやってくる。ほかに花を咲かせる木が少ないならば、花粉を運ぶ虫や鳥が少ない季節でも、彼らをひとりじめできるだろう。 さらに、多くの植物が開花する春は、たくさんの種類の花粉が飛んでいる。他種の花粉のせいで、自身の受粉が妨害される可能性もある。自種以外の花粉があまり飛んでいない時期に開花すれば、他種の花粉で受粉を妨害されないという利点があるかもしれない。 サザンカには多くの栽培品種(園芸品種)があり、花の時期や花形などでサザンカ群、カンツバキ群、ハルサザンカ群の3つの群に分けられる。サザンカ群以外はツバキとの交雑である。 サザンカの種子からは黄色みをおびた油が採れ、食用油、髪油などに用いる。主成分はオレイン、ステアリン。しぼりかすは水田の殺虫剤にされる。材は紅褐色をおび緻密で堅く、建築、細工物、彫刻などに用いるほか、良質の薪炭材とされる。 |