スノードロップ(待雪草)


   
 十数年前、冬のロンドンの公園を散歩していたら、白い花を下向きに付けるスノードロップが咲いていた。スノードロップは寒さに強い花だという。ヨーロッパ全域に広く分布しているが、イギリスで自生しているのは、ほとんどが昔の修道院の跡地か庭なので、専門家は15世紀に修道僧がイタリアから持ち帰ったものと考えている。
スノードロップはヒガンバナ科ガランサス属の多年草で、原産地は南東ヨーロッパから西南アジアのコーカサス地方で、約20種が分布している。
 ガランサスという属名は「乳色をした花」という意味のギリシア語に由来している。
 かつては「球根スミレ」と呼ばれていたが、16世紀から17世紀にかけて人気のあったドイツの真珠のイヤリングSchneetropfen(Snow-drop)と似ていたので「スノードロップ」と呼ばれるようになったという。
 スノードロップは雪の雫(しずく)という意味だが、ドロップには耳飾りという意味もある。和名はマツユキソウ(待雪草)という。
 早春に開花することから聖燭祭(2月2日、聖母お浄めの祝日)の花と言われ、純潔の象徴となり、このことから古くは修道院で盛んに栽培され聖燭祭に祭壇でまかれた。
しかしイギリスの田園部では,白い花が屍衣を連想させるとして忌み嫌い,この花を家の中に持ちこめば不幸が起こると信じられている。
 伝説によれば、アダムとイブが楽園を追われたとき、天使がイブを慰めるため降りしきる雪に息を吹きかけたところ、その雪の落ちた場所からこの花が咲き出たという。

 スノードロップは球根で育つ。種子から育てることもできるが、花が咲く大きさの球根に育つまで数年かかる。球根は直径2cmほどで、地際から2~3枚の葉を出す。花茎が伸びてその先端に、冬の終わりから春先にかけ花を咲かせ、春を告げる花として知られる。花は白で、3枚ずつの長い外花被と短い内花被を持つ六弁花。いくつかの種では内花被に緑色の斑点がある。夜になると花を閉じ、昼間吸収した温かい空気を保管する。だから夜明け前の気温が低い時間帯では、花の中の温度が周囲の気温より2度程も高いという。

スノードロップはヒガンバナ科なので、球根にヒガンバナと同じ有毒物質のリコリンを含んでいる。球根の見た目はノビルやエシャロットに似ているので間違って誤食してしまうことがある。するとめまい、嘔吐、下痢を起こすことになるので,要注意である。