シャクヤク(芍薬)

    シャクヤク

「立てば芍薬 座れば牡丹 歩く姿は百合の花」

 美人を形容して詠まれたものである。しかし、これは不自然な歌である。芍薬、牡丹共にボタン科ボタン属の植物である。芍薬は多年草で、高さは60cmほど、一方牡丹は低木で、高さは100~180cmにもなる。
 であれば、「立てば牡丹 座れば芍薬 歩く姿は百合の花」とすべきかもしれない。
 ただ、語呂が悪く、七七七五調を崩してしまう。
 「芍薬は立って見るのが美しく、牡丹は横向きに咲くので、座ってみるのがいい」と解釈する向きがある。しかし、これは花を見る側の立場からのもので、美人の立ち居振る舞いを形容したことにならない。

この言葉は漢方における生薬の用い方をたとえたものだとする解釈がある。
「立てば芍薬」はイライラし、気のたっている女性に対して、芍薬の根を用いて、痛みや筋肉のこわばりを和らげる。
「座れば牡丹」は座ってばかりいると血液の流れが悪くなり、血液が滞る。このような状態に対して牡丹の根の皮の部分(牡丹皮)を用いて血液の流れを改善する。
「歩く姿は百合の花」は百合の花が風でゆられているように、心身症の人がナヨナヨと頼りなげに歩いている姿を意味している。百合の根を用いて不安や不眠、動悸を改善する。


 シャクヤクは中国北部から朝鮮半島北部が原産。日本には薬草として平安時代に渡来したと考えられている。「延喜式」(927)に山城や相模から典薬寮に貢進されたとの記載がある。850 年頃の「諸国俚人誌」に「小野小町が出羽国小町村に 99 株植えた」との記述があり、これによると平安時代の初めには渡来していたことになる。

 6月頃、茎の先に径15cmほどの大型の美しい花を咲かせる。
 牡丹が「花王」と呼ばれるのに対し、芍薬は花の宰相、「花相」と呼ばれる。ボタンが樹木であるのに対して、シャクヤクは草である。そのため、冬には地上部が枯れてしまい休眠する。ボタンの台木として使用されるが、シャクヤク自体の花も美しく、中国の宋代には育種が始まった。江戸時代には「茶花」として鑑賞され、品種改良も行われた古典園芸植物でもある。また熊本藩では武士の素養として園芸を重要視し、奨励された。特に六種類の植物が盛んに栽培、育種され、これを「肥後六花」と総称するが、キク、朝顔、椿等と共にシャクヤクもそこに加わっている。この熊本で育種された系統を「肥後芍薬」と呼ぶ。これを含め日本のシャクヤクは一重咲きが中心で、特に雄蕊が大きく発達して盛り上がり花の中央部を飾るものが多く、全般にすっきりした花容である。この花型を「金蕊咲き」と呼び、海外では「ジャパニーズ・タイプ」と呼んでいる。

 花の形は「一重咲き」「八重咲き」「翁咲き」などがある。

 前述のように、シャクヤクの根を乾燥させて生薬として用いる。白芍と赤芍に区別される。白芍は滋養補血、鎮痙・鎮痛効果があり、他の生薬と配合して月経調節、胃痙攣の疼痛、慢性胃炎、肝臓疾患、リウマチ性関節炎などに、赤芍は浄血解毒の効があり、他の生薬と配合して婦人科疾患、打撲傷などの内出血、神経痛などに用いられる。

日本には、中国から渡来したシャクヤクとは別に、白花のヤマシャクヤクとピンク色のベニバナヤマシャクヤクが山地の落葉樹林下に自生している。ただ、ヤマシャクヤクは準絶滅危惧種、ベニバナヤマシャクヤクは絶滅危惧Ⅱ種に分類されている。






                                                     ベニバナヤマシャクヤク