ツツジ(躑躅)


    ツツジ科ツツジ属の低木または高木。葉は常緑または落葉性で互生。春から夏にかけて、小柄がある鐘形あるいは筒形で先が5~8裂する花が枝先に数個集まって咲く。北半球の温帯を中心に約850種、日本には約50種が自生し、日本全国に分布する。日本にはツツジの名所も多く、4月から6月にかけて、日本全国でツツジ祭りが開催されている。

 一般に、ツツジと言えば、ヤマツツジまたはオオムラサキツツジを指す。ヤマツツジは日本全国の山野に自生し、多くの園芸種の元になったツツジである。
 オオムラサキツツジはケラマツツジとキリシマツツジ、もしくはリュウキュウツツジの交雑種といわれる。江戸時代に作出され、栽培されてきた園芸種である。ツツジ類の中でも花が大きく、花色が鮮やかで、花付きがよい。

 江戸時代に爆発的なツツジブームが起こったが、そのきっかけを作ったのが薩摩で生まれたキリシマツツジ(以下キリシマ)である。キリシマは九州に自生するヤマツツジとミヤマキリシマとの交配種、あるいは鹿児島に自生するサタツツジではないかと言われる。 それが大坂、京都を経て江戸にも伝えられたが、関東の土壌が栽培に適したこともあって、キリシマのさまざまな園芸品種が誕生した。江戸のツツジブームの仕掛け人は染井村(現在東京都駒込区)の植木商・伊藤伊兵衛三之丞である。彼はキリシマを中心に全国から珍しいツツジやサツキを集め、栽培した。彼の労作「錦繍枕」元禄5年(1692)にはツツジ164品、、サツキが161品、合計335品種も図説され、栽培法も記されている。
 三之丞は「錦繍枕」でツツジとサツキの区別をしているが、江戸時代にはほとんど区別されていなかった。両者が区別されるようになったのはサツキが流行した明治30年代以降である。
幕末には、大久保百人町(伊賀組の御鉄砲百人組が居住)のツツジが大ブームとなった。東西8間、南北2町ほどの両側に数千本のツツジを見ることが出来た。これらの花は武士に好まれ、参懃父代制度で江戸に建てられていた約3000もの武家屋敷や藩邸の庭に植栽され、各地に広まっていったキリシマ人気のなか、九州の久留米でサタツツジとキリシマをもとに生み出されたのが久留米ツツジ。その祖先型ともいわれる「小霧島」は、天保年間(1830~44)に誕生。藩主の有馬頼成は、この花を門外不出の「お留花」と定めた。
 これらキリシマや久留米ツツジを含むツツジの育種はさらに進んで、2000を超える園芸品種が誕生。その数は木本類としては日本最大を誇る。

 ツツジとサツキの違いは何か。違いを挙げると次のようになる。

 ツツジの樹高は、5~10m。
 ツツジの葉は長さ5~7cm、巾約1.5cm、光沢がなく、葉の裏側は服などに付着し 易い。葉の細毛は緑色。
 ツツジは落葉樹が多い。
 ツツジは4~5月頃紅色、ピンク、絞りなどの花を一度に開く。おしべの数は5本以上。10 本もある。
 花後に新芽が出る。

 サツキの樹高は1m程度。
 葉は、長さ2~3cm、巾も6mm程度、表側の光沢はツツジとは別種かと思うほど。葉の細毛は茶色。
 サツキは常緑樹が多い。
 サツキは5~6月頃、真紅、淡い紅色、ピンクなどの花を一週間くらいの間に順々に開 く。おしべの数はほとんど5本。例外もある。
 開花期にほとんど新芽が出ている。

 しかし、それぞれ例外もあり、断定的に違いとはいえない。またサツキの正式名称はサツキツツジでツツジの1種である。サツキをツツジと分ける必要はないとする説もある。

 漢名は「躑躅」とされるが、これはヒツジがこれを食べて躑躅(足踏み)して死んだことから名づけられたとされ、本来の漢名は「羊躑躅」といわれる。
 ツツジの花を上手に採ると花片の下から蜜を吸うことができ第二次世界大戦中は当時の子供たちの数少ない甘みとなっていたが、多くの種に致死性になりうる毒成分のグラヤノトキシンが含まれ、特に多く含むレンゲツツジは庭木として利用されることもあるので事故を避けるために注意しなければならない。また合弁花類である。 ツツジ属の花の花弁には斑点状の模様が多く見られる。これは蜜標(ガイドマークとも呼ばれる)で蜜を求める昆虫に蜜のありかを教えている模様であることがよく知られている。蜜標によって花に潜り込む昆虫による受粉ができるように雄しべがついており、雌しべの柱頭は蜜標のある方に曲がっている。

 1966年8月、長野県の農協職員が集団食中毒を起こした。彼らが食べたのは、リンゴの受粉用に飼育していたミツバチのハチミツ。どうやら近隣に生えていたツツジから集めたミツが混ざっており、分析の結果、グラヤノトキシンの存在が認められた。

ツツジが自生する地域では、ハチミツ中毒が多発することは国際的にもよく知られており、国立医薬品食品衛生研究所の資料(2010年)によると、ドイツ連邦機関が「トルコの黒海沿岸地域で採集されたハチミツは食べないように」という勧告をだしていた。トルコ国内で集団食中毒が発生し、しかも救急搬送が必要なほど症状が重かった。ちなみに地域住民たちはハチミツが有毒であることを知っており、気をつけながら利用しているという。
 ツツジ科植物のすべてが有毒ではなく、危険性もまちまち。どのハチミツが安全かなど、区別のしようがない。