ウツボグサ(靫草)


  ウツボグサ

 美術館の庭の片隅に、園芸種のウツボグサが群れて咲いています。

 シソ科ウツボグサ属の多年草。日本全国の日当たりのいい草地に自生。高さ10~30cm。シソ科の植物は四角形の茎を持つものが多いが、ウツボグサも茎は四角形で全体に白い粗毛がある。茎葉は長さ2-5cmの長楕円形で対生し、長い柄がある。全体に細かい毛が密生し、シソ科植物に見られる特有の芳香はない。初夏に青紫色の唇形花を茎の頂に固まって咲かせる。苞葉1個に3個ずつの花がつく。花冠の長さは2cm位で下唇は3裂する。
雄しべは花冠の奥から生え,花冠の上の裂片すなわち上唇近くまで達するものと,花 冠の中ほどから生え,それより短いものとが各一対ずつ計4本ある。雄しべの先端には黒紫色の葯があり,葯は細長く裂ける。裂閧部はハナバチに花粉が付きやすいよう下を向いている。 
雄しべの花粉が少なくなった頃,雌しべは雄しべの後を通り柱頭を花冠の上唇の先端近くまで伸び出させる。ウツボグサの花は雄性先熟なのである。
 花冠の奥には蜜が分泌される。その蜜を求めてハナバチが訪れる。
 ウツボグサは花が終わる頃から匍枝(ふくし)を延ばし生育地を確保していく。このように種子と匍枝と2つの繁殖様式をもっている。

 花の形が武士が矢を入れた靫(うつぼ)に似ていることからこの名がある。夏に花穂が枯れると黒くなるところから夏枯草(かごそう)という名がある。薬用になるのはこの夏枯草で、花穂が枯れかけたころに採取し、天日乾燥して保存する。これを煎じて内服すると利尿作用があり、煎液をうがい薬として外用すると扁桃腺炎や口内炎などの消炎効果がある。その他に、傷薬、止血薬、うがい薬の薬効がある。

 若芽や軟らかい葉、花穂、花は食用になる。若芽や柔らかい葉は天ぷらに、花穂はきれいに洗い、薄めのコロモで天ぷらに、花は熱湯をくぐらせ、甘酢、三杯酢で食する。