二月の半ば、晴れた日に庭の片隅にユキワリイチゲが数輪咲いた。朝方、日陰にある内は花は閉じたままで、日が昇り、花に日が差すと徐々に花を開いた。可憐な花である。 雨の日や曇りの日も花は閉じたままで、日が差さないと花は開かない。 ユキワリイチゲはキンポウゲ科イチリンソウ属の多年草で、学名はAnemone keiskeana T.Ito ex Maxim.。日本固有種で、近畿以西の本州西部から四国、九州の丘陵地帯の山際や道ばたに分布している。 根茎は太く多肉質で横にはい、しばしば紫色を帯びる。早春植物(スプリング・エフェメラル:春の妖精という意味)の1つであり、葉を展開している秋から春の期間に光を得ることが出来る立地に生育している。地下茎があり、群生する。秋に葉を出し、根生葉は三裂し、紫色を帯びた濃い緑色で斑がある。裏面は濃紫色。3月に花茎を出し、20~30センチほどに成長する。茎につく葉は3枚が輪生する。 3~4月、花の色は白く、淡い紫色を帯びている。径3~3.5cm。ただし、花弁のように見えるのは萼片で12~22個ある。本来の花弁は無い。 花の後にできる実は痩果(そうか:熟しても裂開せず、種子は1つで全体が種子のように見えるもの)である。しかし、ユキワリイチゲは地下茎で増えるので、種子が付くことはめったに無い。地下茎で増えているため、周囲に生えるユキワリイチゲも同じ個体なので、受粉しても種子ができないからである。たまに他の場所にある個体から昆虫によって花粉が運ばれた時にだけ種子ができる。 初夏までに、地上部は全て枯れて無くなる。 ユキワリイチゲ(雪割一華)は早春、雪を割って咲く一輪の華から名付けられた。 学名のkeiskeanaは、幕末から明治に活躍した医師で本草学者の伊藤圭介にちなんでいる。 圭介はオランダ商館のシーボルトのもとで植物学を学んだ。 |