ユズ(柚子)

   
 ユズはミカン科ミカン属の常緑小高木。柑橘類の1つ。中国南部原産である。消費量・生産量ともに日本が最大である。
 古くは中国で、「柚(ユウ)」とよばれたが、果汁が酢のように酸っぱいので、「柚酢」とよばれ、「柚子」に転じたといわれる。英語でも「ユズ(yuzu)」という。
 日本ではホンユズとハナユズの両方をユズと言い、混同している場合が多い。また、獅子柚子(鬼柚子)は果実の形状からユズの仲間として扱われることがあるが、分類上はザボンやブンタンの仲間であり、別種である。
徳島県のスダチ、大分県のカボスなどは、ユズを片親とする雑種と考えられる。

果皮は日本料理に欠かせない香味料であり、薄く切り取って吸物や茶碗蒸しに、刻んで焼き物などにのせる。またおろしてユズ味噌としたり、薬味、香りづけに用いる。果汁はポン酢に使う。柚餅子(ゆべし)はユズを使った保存食で、ユズの中に味噌、米粉、ソパ粉などを詰めて蒸してつくる。

薬効
① リウマチ・神経痛・冷え症・腰痛……ユズの皮の風呂がよく効く。ユズの成分のうち、精油(ピネン、シトラールなど)が皮膚を刺激し、血行をよくする。
 江戸時代には冬至の日にユズ湯に入ると風邪を引かないとされていた。
 リウマチには種子を黒焼きにして熱湯をさして飲んでも効く。
② ジフテリア……干した種子3個分の煎じ汁を飲む。
③ 刺がとれないとき……種子の黒焼きを、ご飯粒といっしょに練って貼ると取れる。
④ 流産・産後の腹痛……皮を煎じて飲む。
② 消化不良・胃腸病……胃腸の働きを助ける。



作品は上からハナユズ、ホンユズ、獅子柚子である。


ハナユズ
 ミカン科ミカン属の常緑小高木。日本原産とも言われるが、詳しいことは判っていない。果実が小形で早熟。ハナユズの学名は「Citrus hanayu」。ホンユズより低木で、実がつくまでの年数が短く、実もたくさんできるという特徴がある。
果実は扁平した球形で、直径はホンユズよりも小さな2~3センチほど。10~12月に黄色く熟すが、7~8月に未熟な果実を収穫し、外皮あるいは小片を料理の薬味、食酢などに使う。

ホンユズ
 中国揚子江上流の原産であると言われる。中国から日本に伝わり、各地で栽培されている。日本の歴史書に飛鳥時代・奈良時代に栽培していたという記載がある。
常緑小高木で、高さは4mほどになり、直立して大木になる。花期は初夏(5月ころ)で、葉のわきに白い5弁の花を咲かせる。
 秋には球形の果実を結ぶ。果実は比較的大きく、果皮の表面はでこぼこしている。種子の多いものが多い。酸味は強く、独特の芳香を放つ。
 ミカン属の中でもっとも耐寒性が強く、年平均気温12度から15度の涼しい気候を適地とする。柑橘類に多いそうか病、かいよう病への耐久があるため、ほとんど消毒の必要がなく、他の柑橘類より手が掛からないこと、無農薬栽培が比較的簡単にできることも特徴のひとつである。
成長が遅いことでも知られ、「桃栗3年柿8年、ユズの大馬鹿18年」などと呼ばれることがある。このため、栽培に当たっては、種子から育てる実生栽培では、結実まで10数年掛かってしまうため、結実までの期間を短縮するため、同じミカン科のカラタチへの接ぎ木により、3~4年で収穫可能にすることが多い。

獅子柚子
 ミカン科ミカン属の常緑低木。高さは3~4メートルになる。「獅子柚子」は中国原産で奈良時代に渡来した「文旦」の仲間で、5月から6月頃芳香のある白い花を咲かせ、果実は直径20cm以上になり、重さも1キロぐらいになる。皮が非常に厚く、中のサジョウ(砂じょう)はグレープフルーツ程の大きさである。
 果実は酸味が強く、生食には向かないのでジャムやマーマレード、柚子酒などに利用されている。
 別名は「鬼柚子」「獅子頭」「ジャガタラ柚子」で、花言葉は「健康美」「幸福」。

サジョウ:みかんの房のこぶくろ(じょうのう)の中にある、果汁が入った小さいつぶつぶのこと。つまり果肉にあたる部分。砂のう(サノウ)とも呼ぶ。