令和6年9月13日(金)~12月10日(火)は「源氏物語の植物展を開催しています。 

キ リ

 ゴマノハグサ科キリ属の落葉高木。本州・九州の山野に自生。原産地がよく分からないが、中国または韓国とする説がある。朝鮮や九州に野生状態のものがある。初夏、枝先に円錐花序を直立し、淡紫色の花を多数つける。
 花後、卵形で先の尖った実が出来る。最初緑色をしているが、黄色くなり、やがて茶色になって、二つに裂ける。そして翼を持った数千個もの種子をまき散らす。種子はよく飛ぶ。九州にある野生のキリが、このようにして飛んできた中国または朝鮮の種子から生長したものである可能性を否定できない。

 「壺」とは中庭のことであり、「桐壺」は桐を植えた殿舎(淑景舎:しげいしゃ)をいう。また、そこに住む妃(きさき)の呼び名にも使用された。桐壺更衣は高貴な家柄の出身ではないのに帝の寵愛を集めたので、多くの女性の嫉妬を買った。嫌がらせを受けた桐壺更衣は、その心労から、若くして世を去った。            
 女御は更衣より身分の高い女性(皇族や大臣家以上の家柄)で、皇后は普通女御から選ばれた。

 平安時代、紫色は高貴な色とされ、淡紫色の桐の花は高貴な花とされた。





ユウガオ

 ウリ科ユウガオ属の一年草。アフリカ、熱帯アジア原産。古くに日本に渡来。茎は長い蔓となって地を這うか、分枝する巻きひげで他物に絡みつく。
 7~8月、葉腋に1個、長い柄のある白色の花を付け、夕方に開き、翌日午前中にしぼむ。花後、長楕円形の液果となる。干瓢を作るのはユウガオの変種のフクベ。またヒョウタンもユウガオの変種である。

 乳母の病気見舞いに行ったとき、隣家に隠れ住む女性が扇の上にユウガオの花を乗せて源氏に贈る。扇には歌が書かれていた。

心あてに それかとぞ見る 白露の ひかりそへたる 夕顔の花  (夕顔)
(もしかして、白露に光る夕顔の花のようなあなたは源氏の君では)【4帖 夕顔】



ベニバナ

 キク科ベニバナ属の1年草。エジプト原産。古く日本に渡来。
 7~8月、茎の頂きに径2.5~4cm程の頭花をつける。花は初めは鮮やかな黄色で、後、赤色に変わる。紅色の染料や化粧品の原料として栽培された。ベニバナは茎の先にある花を摘むので末摘花(すえつむはな)といわれた。

なつかしき 色ともなしに 何にこの すゑつむ花を 袖に触れけむ 色濃き花と見しかども (源氏)
(親しみを感じる色でもないのに、どうして末摘花に袖を触れたのだろう。色の美 しい花とは思ったが)   【6帖 末摘花】


ムラサキ

 ムラサキ科ムラサキ属の多年草。日本各地の山地や草原に自生。高さ、30~60cm。茎は直立し、紫色の太い根が地中にまっすぐ伸びる。葉は互生し、披針形で長さ3~7cm。6~7月頃、葉の付け根に白い小花が咲く。
 根は古来紫色の重要な染料といて用いられてきたが、日光によって退色しやすいため、今日ではあまり用いられていない。現在は絶滅危惧種になっている。

手につみて いつしかも見む 紫の ねに通ひける 野辺のわか草   (源氏)
(いつになったら 手に摘んで見ることができるだろう あの紫草〔藤壺の宮〕の 根につながっている 野辺の若草を)    【5帖 若紫】

カエデ

 カエデ科カエデ属の落葉樹。日本には26種分布する。
 葉の形が蛙に似ているので「蛙手(カエルデ)」、それが転訛してカエデとなったといわれる。

モミジとカエデは同一のカエデ属に属する。野生種でイロハモミジやオオモミジなどモミジと付くのは少数派である。モミジは掌状葉が深く切れ込むものだが、カエデにも同じようなものがあり、モミジとカエデに厳密な区別はない。
 紅葉の宴は奈良時代に始まり、平安時代になると紅葉狩りや紅葉合わせといった遊びが盛んに行われるようになる。
ですよ)      【7帖 紅葉賀】