令和6年3月8日(金)~6月4日(火)は「春を代表する花 椿・桜・バラ特集展を開催しています。 

ヤブツバキ

 ツバキ科ツバキ属の常緑高木。北海道を除く全国に自生するが、伊豆半島、伊豆諸島は特に自生が多く、名所になっている。ツバキは日本特産の植物であり、「椿」の字は国字である。樹高10~15mになる。葉は互生し、表面は濃緑色で光沢があり、裏面は淡緑色、縁には細かい鋸歯がある。2~4月、枝先に赤色の花が1個ずつ咲く。花弁は長さ3~5cmで5個有り、平開しない。果実は直径3cmほどの球形で果皮は厚く、熟すと三裂し、淡黒色の種を出す。種を絞ってツバキ油が採られる。
ツバキは伊東市の花木。
 古代には冬に葉を落とさないのは魔力を持つためと信じられ、ツバキは神聖な木とされ、天皇の権威の象徴とされた。



玉之浦

 濃紅地に白覆輪の中輪で、世にも珍しいヤブツバキの突然変異種。国際ツバキ名鑑の巻頭を飾る世界的な名花として広く知られている。
 原木は五島列島の福江島玉之浦町父岳(461m)の中腹に自生したもので、昭和22年炭焼業者によって発見され、昭和48年(1973)長崎で開催された全国ツバキ展に出展されて、幻の椿として一躍愛好家の注目を浴びた。
 しかし、これが世に広まると現地を訪れる者が相次ぎ、心ない人々によって濫獲され、原木はついに枯死するに至り、天然記念物ともいうべき貴重な遺産は失われてしまったが、その子孫は世界に広がっている。
 原生地に、玉之浦町と五島の椿と自然を守る会によって植樹と記念碑が建てられている。








ヤマザクラ

 バラ科サクラ属の落葉高木。別名:シロヤマザクラ。幹は高さ20-25 m、径80-100cmになる。本州(太平洋側は宮城県・日本海側は新潟県以西)・四国・九州に分布し、冷温帯から暖温帯にかけて生育している。4月、若葉が出ると同時に、枝上に2~5個ずつ、淡紅白色の花を散房状につける。
 桜の名所である吉野には約200種、約3万本の桜があるが、その中心はヤマザクラである。

 今でこそサクラといえばソメイヨシノであるが、古来より日本人の心をとらえてきたのはヤマザクラである。春の開花は秋の豊穣を占うものとされ、花見の起源も古代の農耕儀礼にあると考えられる。「桜の宴」が初めて催されたのは嵯峨天皇の時代といわれる。宮中に始まったこの行事が民間に伝わり花見となる。花見が庶民に普及するのは江戸時代からである。






オモイガワザクラ(思川桜)

 バラ科サクラ属の落葉高木。昭和29年(1954年)に小山市東島田の思川のほとりにある修道院の庭先で、春秋二度咲く「十月桜」の種子を東大理学部付属植物園元主任の久保田秀夫が採取し、種を蒔いて育てたところ花の様子が違っており、色が濃く花は小ぶりの突然変異だった。側に流れる川から思川桜と名付けられた。
花は八重咲き、花弁は約10個、中輪、淡紅紫色。八重咲きのコヒガンの中で比較すると、開花期が遅く、枝が横に広がる。葉に先駆けて、淡紅色の花を枝いっぱいに付け、爛漫と咲く姿は誠に美しい。 花期は4月中旬。








ナニワイバラ

 バラ科バラ属の蔓性落葉低木。高さ1~2m。原産地は中国の南部と台湾。日本へは江戸時代に難波商人によって持ち込まれて販売された。それが名の由来でもある。近畿地方から九州にかけて野生化している。蔓は長く伸びれば10メートルにも達する。蔓には鋭い棘がある。葉は3出複葉(1枚の葉が3つの小さな葉に分かれた形)である。小葉は長さが2~4センチくらいの楕円形で、光沢がある。
 花は5~6月に、香りのよい大きな白い花を咲かせる。花径7~8センチの5弁花で、真ん中には黄色い雄しべがたくさんある。花後、実は偽果(子房以外の部分が加わってできている果実)で、秋に赤橙色に熟する。実は生薬で金桜子(きんおうし)といい、止瀉、縮尿などの薬効がある。